祖父の水筒/とよよん
 
もなくて
日々感謝されるようなことも少ないようで

床の間の横の飾り棚に 不似合いな
光を失くしたアルミの水筒
細かい傷 あちこち陥没していた
それを手に取り祖父のする
水筒の濁り水だけで戻ってきた話は
幾度となく繰り返された

お前にやると何度か差し出されたけれど いつも受け取りかねて
そっと棚に戻していた水筒

話を何度も聞くことで
心の平和を守ったと 信じていたい

平和とは
浸かるものではなく 護るもの

その旅路の果てで 祖父に
良かったんじゃないか と言われたいから


(2015/2/26にツイッター投稿した詩です。黒木アンさんと行った連詩の一部。)
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