旅人/
服部 剛
遠藤周作の「イエスの生涯」を読み終え
僕は本をぱたん、と閉じた
(密かな息が頬にふれ)
本の中で十字架にかけられ
頭(こうべ)を垂らし、息絶えたひとの想いは
肉体(からだ)を脱いだ風となり
二千年の時を越え
遠い異国で本を手にする僕の前に…
――世に消えないものは何だろう?
死ぬのが恐くて逃げた弟子等さえ
ゆるして死んでいったひとよ
ひと時目を瞑(つむ)った、僕を
遠くから呼ぶように
暗闇に浮かぶ
あの瞳
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