青い夕暮れ/石田とわ
 

     
       あの日の空は青かった
       夏が終わろうとするほんの手前
       夕暮れ迫る束の間の時刻
       受話器の声が世界の音を奪い去る
       それでも空は青かった
       タクシーの窓から景色は流れ
       それがあまりにもスローモーで
       苛立ちはねじ曲がり、奇妙な滑稽さが
       後悔を理不尽を押し流し
       見知らぬ地へ行く錯覚をひきおこす
       いつか来るはずの約束の日
       夕暮れがうしろに迫っていた
       はやく帰りつかなければならない
       あの空が青いうちに
       この夕暮れで
       夏が終わろうとも






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