窓辺/あおい満月
 
真冬のリビングに
玉葱の皮がひらり
落ちている。
昨夜、
母親が手探りで
カレーかポトフーを
つくろうとしたときに
すり抜けたのだろう。



浴室で、
髪の毛が束になって抜ける
髪の毛はまるまって
宇宙をつくり、
海にとけていく。
抜かれた髪の毛の孔は
抜け殻になったまま
芽吹く春を待つ

**
母親の桐の箪笥をあけると、
預金から引き出した
銀行袋が散っている。
どの袋も空だ。
足元にぎざぎざした
何かが落ちている。
いつのまに入り込んだのか、
夏の脱け殻が、
胎児になって踞る。
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