闘鶏/月形半分子
ふるさとの町から井戸水をくむ音がなくなって久しい
町にはじめから祭りなどなかったのだ
特に冬には。駅前の小路にも?
ふるさとの町から冬支度がなくなって久しい
町にははじめから燃えるような秋などなかったのだ
特に九月には。海の波が高まるだけ。
ふるさとの木立はいつからか裸になっていた
飾り気のない木々の枝は単調な線を空にむけ
酸でもふりまかない限り
彼ら彼女らは真っ直ぐにたっていられそうだ
線路のように。そう、迷子のいく線路。
ふるさとの町には父だけがいる。
最後に私に残されたものが痩せた闘鶏であるかのように。
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