マスク/為平 澪
 
インフルエンザが流行り出すと 
白いマスクが 飛ぶように売れる 
ウイルスに感染しないため、 
みんながみんなでしたがるマスク 
唇から 漏れるイントネーション 
頭も つられて 上がったりさがったり 
地方出身者だの、田舎者だの、と 
都会人に ウイルス拡散 
山手線では ゴホンと注意の咳払い 
誰もマスクをつけたがる 
他人とは喋りたくない 関わりたくない 
それなら見えない声を 電子通信 
いつでも光のウイルスは 
マスクの壁を越えて声を出す 
マスクの下の唇が 赤過ぎたなら 
白い色で覆い隠せ 
口の端を 歪めて笑っていたならば 
マスクは顔を綺麗
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