黙示/服部 剛
小学生の頃 道徳の授業で
トマホークというミサイルの映像を見せられた
昼休みの図書室で
「はだしのゲン」を読んだ
全身を包帯で覆われた母親が
生と死の境目で
息子の名を
とぎれとぎれに呼んでいた
その傍らを
自らの目玉を手のひらに乗せた男が
水を求め猫背で歩いていた
僕は こわかった
大晦日(おおみそか) 両親に連れられて
深夜の初詣に行くたびに
「世界が平和でありますように」
と小さい両手をあわせた
祈りは香の煙に溶けて
お経と木魚の音とともに吸い込まれていった
境内の屋台で
お父さんとお母さんにはさまれて食べた
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