元日の夜に/草野大悟2
った。今にも号泣しそうだ。全く訳が分からない。全然分からない。感動? なに? 感動? 私の全身に、またもや ? が満ちあふれてゆく。
「ええ、美智子も感動しました」
どうしたことか妻まで涙目になって、今にも薄っぺらい男と手を取り合って号泣しそうだ。
「田中二、田中三。そろそろお暇するぞ。長居は、皆さんにご迷惑がかかる」
田中がしかめっ面して言った。ああ、この二人、田中二と田中三というんだ。してみると、これまで田中さんとよんでいた人物が、
田中一?
どうでもいいことを、どうでもいい気分で、私は考えていた。
「それでは、洋太郎さん、皆さん。突然お邪魔したうえ、ご馳走にまでなって、誠にありがとうございました。これで、私たちの今年の仕事始めは終わりです。今年一年が皆様にとって良い年になりますよう、私たちチーム一丸となってお祈りしています」
田中一と田中二と田中三は、綺麗に頭を揃えておじきし、「お元気で」との言葉を残して、外で待っていた連れと一緒に帰っていったのだった。
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