元日の夜に/草野大悟2
 
ている。
 時計は、午後八時半を回っている。時計をちらりと見て田中が言った。
「洋太郎さん、もうお分かりでしょう、私たちが何者で、何のために、元日のこんな時間に、ご無礼も顧みずお伺いしたか。そして、あなたを始め、ここにおいでのご家族の皆さんが、懐かしい温かな気持ちを抱かれるのか」
「もうお分かりでしょう、って言ったってねぇ。いっちょん分からんばい」
「僕たちも、皆目分かりません。お姉さんはどうなんですか? 彼らのこと分かります?」
「美智子? 美智子は……、分かりませんけど、何か問題でも?」
「いや、そんな、問題なんて、全くありません。こんな質問をした僕らが馬鹿でした」
「そうね。前
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