地平線上のある出来事/小川麻由美
 
赤い いや 赤というよりも
ただただ光あるのみというような
西に隠れてしまった太陽の
最後の恵みを一身に受けて周囲に放つ
一筋の雲が地平線にて輝く

その選ばれたかのような雲に
光は吸い取られながら身を潜めていく
たっぷりと光を含有したであろう雲だが
自らの行為で身を滅ぼした者のように
その雲は視界から消え去ってしまった

しんしんと輝く月の光では もはや
あの壮大な光の移ろいは再現できない
月あかりの元では地平線を確認できず
大地と空の堺が曖昧になってしまった

曖昧 慈しむべきものだと 
はたと気付いた
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