心の蓋トリオ/とよよん
 



蓋をした心のすぐそば、吹き溜まる感情の渦が
縄張りを広げている。

やがて渦が傷を付けて、
肉腫となり生み出される
ふたつめの心。

夕方五時のサイレン
あの角を曲がると、
開いてしまう古い心の蓋。

むくむくと這いだす黒い獣、
あの日の光景を、感情を、
まざまざと、見せつけるから。
涙を溢れさせるしかない。

ふたつめの心は冷静で、
本家の様子をただ見つめ。
細胞を通して伝わってくる、振動を。押し殺そうとしている。


**

夕方五時の合図にスピーカーから音楽が流れる街に住んでいる
公園の子どもたちはさようならをして家へ向かう

[次のページ]
戻る   Point(2)