笛の音 /
服部 剛
遠い旅路に目を凝らせば
吹雪の風によろめきながらも
なんとか歩いている奴の姿が
幻のようにぼやけて、見える。
(ああ、あれは幼い頃のよちよちの、
思春期の頃のぼろぼろの、年老いた
日々のへとへとの、私の冴えない姿
じゃないか…)
――何処からだろう
そんな冴えない背中にさえも
時折
叱咤激励するような、笛の音
(ぴぴーい!)
怒号の風の鳴り止まぬ
吹雪の道に紛れて響く、笛の音は
ずぼり…ずぼり…足跡を掘り進む
彼の背中を、押している。
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