ラストシーン/keigo
 

行間に滲む主人公の涙が
雨音と重なり
過去を洗い流すカタルシス
だけど僕の指先は動かない
流れてほしくない涙もある

活字が捉えて離さない
涙腺に訴え
琴線に響く
人はそれを感動とよぶ
でも、感動ですまされたくない夜もある

そこに止まっていなければ
僕はもっと雄弁に語れたはずだ
友達や恋人や家族に
あるいは自分自身に

その物語のラストを
僕はよく覚えていない
僕はそこで本を閉じたのであろうか?

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