橙の月/凛々椿
いやだなあ
濡れると冷たいから
多分ね
綺麗に見えるようになったんだよ
彼は言った
月が綺麗なことはむかしから知ってる
けれど
そうだね
色んなことが過ぎて
声も失った
あの時の月といまの月の美しさは 同じだけれど同じじゃない
疲れて見上げる空
望みを託して見上げる空
失って見上げる空
欲しいと叫べず見上げる空
雨の匂いがする
早くおうちに帰ろう
みいんな消して 肌をつなごう
そんな未来を想像しようよ
橙の月が覗くうちに
北風が雲を 広げてしまわないうちに
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