魔法使いになりたかった/
そらの珊瑚
テーブルクロスが
一瞬にして失せたけれど
食卓の上に置かれた
皿やグラスは
微動だにしなかったので
私たちは
それについて話すこともせず
もちろん
見つめ合うこともせず
そのまま
静かに食事を続けた
痕跡といえば
蝋燭の炎が
わずかに揺れているだけで
マジックの類ではなく
おそらく
日常が
まばたきする間に
喪失の魔法は存在している
愚鈍な私には
その手が追えないだけ
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