冬/葉leaf
冬もまた、単純に見ればただの日照不足と気温の低下なのかもしれない。だが、私を憂鬱にさせたのはそのようなものではない。むしろ冬の限りない難解さ、禁忌に近い難解さが私を憂鬱にさせたのだ。冬、木々は葉を落とし、多くの動物たちは眠りにつく。だが、そのような木々の中でひそかに脈打つもの、そのような動物たちの中に確実に累積されていくもの、それらの隠微な構造は極めて暴きがたい。地表を覆う大気が温度の低下によってその構成を変えていく無数の段階に巻き込まれると目が回るかのようだ。人々は厚く服をまとうが、その服には社会的な意味合いが沢山込められていて、その人の個性の表現であったり社会的地位の確認であったり複雑な要素が絡む。私は冬の到来とともに、そのような冬の難解さによって螺旋を描くかのように墜落し、不安になる。同じような難解さは別の季節にもあったはずだが、冬の凍てつく圧迫と生活の煩わしさと本質的な静けさは、否応なく人々の難解さへの感受性を増す。単純そうでありながら無数のひらめきをちらつかせる冬、その迷宮のような構造を前に、私は憂鬱であり、そしてこの憂鬱もまた難解なのであった。
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