現代病/為平 澪
私の身分証明書を コピーし続けるバイヤーの友人は
お金半分と 見えない敵に脅されている
アパートの向かい同士に 姿のない隣人
電気のメーターの数字の物音だけ上がる
チカチカするディスプレイを
流し読みして指で止めると
次の街まで一気に辿りうけるようになったのに
宅配ピザが 深夜徘徊
ハンドルネームで呼び合う
今日限りの恋人同士が
変人に変わりました、と
三面記事
私は 昔の左手首にある 太い筋傷を眺めながら
窓から見えない 木のことなどを 中途半端に想像して
外の景色を画用紙に 美しく描いて見せる
震えながら 布団にもぐりこんで暗闇に溶け込む頃
新しいウィルスが 光に乗って
世界を侵食し始めた
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