That's Me/深水遊脚
誰かを逆撫でしていることはそう珍しいことではない。幸い私のコーヒーを飲んでくれる人たちは正直だ。正直な感想は分かりやすい。「苦い」「渋い」端的で分かりやすいこれらの言葉が2割、声の調子が4割、表情が3割、関係のない会話から察することが1割。その場にいれば10割がわかる。いや、いるだけでは駄目かもしれないけれど。それに10割知る必要もないのだろう。
関係のない会話から察することが7割くらいになるとしたらコーヒーをいれることは、私には苦行にも思える。喫茶店のマスターがいとも簡単にそれをやってのけている姿をみるのは好きだ。それを見るためだけに喫茶店に行きたくなることもある。けれど会話という形でそれに参加しない私が疎まれているのを何となく察してしまうのだ。そのくせコーヒー豆の注文のメールにはちょいちょい要らぬ雑談を書いてしまうアンバランスさ。それについて説明するために無駄に言葉を重ねるのは私にとっても疲れること。お店の変え時なのかもしれない。このエッセイはフィクションであり実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
美味しいことは、雑味がないことではない。たぶん。
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