日常/凍月
 


まだ三日月が出ている

朝日が昇る前の暁は
昨夜寝る前より暗い気がした

冷たい風が吹くと
私たちは身を縮めて祈る

朝靄が街をぼかす
雲がべったりしている
今朝を描いた画家は見事だ
揺らめく太陽と三日月が
同じ画面に描かれている

電車のドアが開く
耳栓から音楽を流しているので
開閉音は微かにしか聞こえない

明るくなる世界に
まだ三日月はあるのかと
ドアにぴったり身を寄せて
踏み切りの
寂しげなカンカンカン……


地下にある駅に
強い風が吹く
なんとなく人工的な感じ


そんな日常に埋もれる自分




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