朝の日記 2014夏/たま
ごろ気づくなんて
鳥を見たら、わかりそうなものに
人間の想像力もアテにならないものだ
二週つづけて台風がやってきた
十九号だ
孵化から一週間、ハトのヒナはぐんぐん成長するが
親のいない巣でどうやって風雨に耐えるのか
いや、どうもこうもない
耐えるしかなかった
ケヤキの枝はなにがあっても折れない
風速二十五メートルはあるだろうか
ヒナを乗せた巣は、大シケの海を往く小舟のようなもの
半夜、小舟は揺れつづけた
五日後、ヒナは無事に巣立った
あばら家の巣も、ちゃんと枝の位置を心得ていたのか
幼いクチバシのまま
母親を追って
なんの挨拶もなしにヒナはいなくなった
なんな、あいつら……と
人騒がせなハトの親子に、妻は不満らしい
秋が深まって
コウちゃんもいなくなった
生まれ故郷の京都に帰ったのだろうか
わたしは春先から蓄えた髭を落として
少し、若返ったけれど
鏡の中の顔はどことなく
羽根のない
恐竜みたいだった
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