『サフランの髪飾り』/座一
 
しみ、その幸せを願う。
でもイナフ自身はちっとも幸福ではないんだ。
ねえ、この世に、たった今、幸せな人はどれほどいることか。
マリークロッカスはイナフに強烈に憧れていた。そして憎らしくてたまらなかった。

他の幸せを願うイナフの涙。
他の不幸せを願う自分の黒い涙。
自分は灰色目玉から、イナフは美しい泉のような目玉から
これほど真逆な対比例はない。

日の傾きだした午後、そこら一面 気付いたら砂漠の中だった。
『終点 リンカイ リンカイ』

イナフは駅もない砂の上に降り立つ。
太陽の光に焼かれて、イナフの姿はうすく翳っていた。
このままじゃいけない。
いいわけがない。
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