眠れない夜の果て/阿ト理恵
なんでもない日だった。大きくのび、した。ボンデングワイヤーのような糸月のひかり、からだの底まで届き、魂のきしむ音、微かにきこえた。すこしだけ走ってみた。裏の森へ行ってみようと。が、すぐ、たちどまり、きょろきょろッ。誰もいない。ぶんぶん耳をふる。折る。針金のようなからだを。
しばらくして、って、アバウトにしか云いようがないのは、腕時計なんかしてないからで、たぶん、おおよそ、しばらくたってたんだ。みあげれば、月は胡座かいて、雲ひとつない空のてっぺん。天使なんか降りてこないことはわかってる。べつに急ぐ必要なんかない、けど、また走ってしまう、走っては、すぐにたちどまる。むかしむかしおお
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