排出の快感/桐ヶ谷忍
 
有象無象の群集の一人でしかないという現実。
自分に期待をかけ過ぎたらしくて、気が付くのが遅れた。
そんな思いは中二で捨てるべきだったのだ。

他方、私は私という平平凡凡な個を通して、そこら辺に溢れている平平凡凡の人たちの
代弁者になりたいとも思っている。
おこがましい願望かもしけないけれど、圧倒的な個のない人間には
そのくらいの野望は許されてよいだろうと誰にともなく弁明している。

けれど、重石がある。
私は本当に、何を思い何を感じたのか言葉にするのが
致命的に下手糞なのだ。
日常生活は上っ面で生きている。
自分が話さなくても良いようにお喋りな人をそばに置く。
こうして
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