草ノ声ー知覧にてー/
服部 剛
知覧の草は、さやさや…哂(わら)う
川のせせらぐままに、身を揺らし
昔――ここから近い滑走路で
戦闘機に乗り、飛び立って
眼下に広がるいちめんの
海の彼方へ
お母さん…!
敵艦に突っ込む
いまはのきわの絶唱で
粉々に砕け散った者達の御霊(みたま)は
あの日から姿を変えて
時には柔いみどりの草となり
時には風として吹き渡り
川辺の岩に腰かける
旅人の我が影に
何やらしきりに囁くように
知覧の草はさやさや…哂う
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