霧の時代/
服部 剛
きみは、掴まねばならない
その手をまっすぐ、明日へのばして
耳を澄ませば――確かに聴こえる
言葉ではない、不思議な呼び声
黙したまま私達を待つ
二十一世紀の霧の向こうの、朧(おぼろ)な灯
長い間、血の気の失せていた
胸に、脈打つ音よ、蘇れ
世の中の饐(す)えた冷気に
悴(かじか)んでいた掌よ、ゆっくり開け
あの日――世で掴むべき夢の為に
きみの産声は天まで、轟(とどろ)いた
やがて霧の幕は開かれ
刷新されるべく、この世界で
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