河谷/Giton
───さをさすみなもに
あをきうを
そうやって押入れの奥に挟まっていた紙を展げてみれば
かつては地図だったらしいだだっ広い切れ端の
ふちは褐色にすりきれ折り目に穴があき
宝島の地図のようだとだれかが言い
小麦のストローほどにも白くはないその紙質は
向こう側が透けて見えるほどざらざらと粗く
かつて青かったであろう水性インクの
稚拙な鉱質の曲線はいくすじにも
カーボン油脂の確かな点線を
苦しそうに辿りまた外れ
一面に迷走していた
消えかけた等高線は夢見る同心円のかたまり
古い時代の測量のいい加減さを誇るかに
ふざけて踊りめいっぱい空間を占
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