空の向こうに/ハァモニィベル
 
一人ぼっちで

そこにある時
オオカミがやって来る
村を襲わぬかわり
子ウサギを3羽
差し出せと
明日の朝までに考えろと

紛糾する村の会議に
案はなかった
沈黙の中、
「僕が行く」
負けたウサギが言った
オオカミの待つ丘へは
僕一人で行くと

翌朝、
丘の上
あらわれたウサギに
オオカミが言った
あと2匹はどうしたのかと
「君を恐れて、隠れている
「ちょっとだけ
「後ろを向いててくれないか」
そう言って、オオカミがみせた一瞬の背中に
ウサギは全力で突進し
オオカミと一緒に谷底に墜ちた。



空の向こうに落ちたかもしれない
一羽の白い命の物語
それは
掌にそっと消えていく
掬い上げた時だけの
確かなエメラルドの輝き










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