空の向こうに/ハァモニィベル
一人ぼっちで
そこにある時
オオカミがやって来る
村を襲わぬかわり
子ウサギを3羽
差し出せと
明日の朝までに考えろと
紛糾する村の会議に
案はなかった
沈黙の中、
「僕が行く」
負けたウサギが言った
オオカミの待つ丘へは
僕一人で行くと
翌朝、
丘の上
あらわれたウサギに
オオカミが言った
あと2匹はどうしたのかと
「君を恐れて、隠れている
「ちょっとだけ
「後ろを向いててくれないか」
そう言って、オオカミがみせた一瞬の背中に
ウサギは全力で突進し
オオカミと一緒に谷底に墜ちた。
*
空の向こうに落ちたかもしれない
一羽の白い命の物語
それは
掌にそっと消えていく
掬い上げた時だけの
確かなエメラルドの輝き
戻る 編 削 Point(10)