歯磨き/川瀬杏香
 
むかしの写真は殆んど燃やしてしまいました。忘れてしまいたいことばかりです。小中学生の頃の同級生たちは、わたしが詩を書いているなどと想像もしないどころか、わたしの存在すら記憶にないでしょう。ましてや子宮を失ったことなど知るはずもありません。
万一、知られるようなことがあったなら「ああ、やっぱり不幸ね」とでも思われるのでしょうか。夜はどうでも良い思考ばかり働いて仕方がありません。どうでも良い思考を詩にしたがって仕方がありません。歯磨きでもすれば忘れるでしょうか。

2014/03/08

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