迷える若人へ/服部 剛
 
友よ、
すでに日の光を受けている君の震える足で
「初めの一歩」を踏み出そう
まだ描かれてはいない、空白の明日に向けて

深夜の闇の部屋の中で
耳を澄ますと聞こえて来る

胸の奥からの偽りなき声が

闇の海底に光を潜める海が
希望の日々を生み出さんとするように
陣痛の唸り声をあげている

( 一艘(いっそう)の小船は波に危うく揺れながらも沈むことなく、
  人知れぬ航路を暗い海面(うみも)に敷いてゆく )

友よ、大丈夫だ。

この世界の何処かには必ず
「真(まこと)の君」を待つ人が
闇の向こうから
かじかんだ細い手を伸ばし
君に向けて開こうとしている

うつむく顔を上げるなら
日の光に照らし出された
「透明な明日」が見える

君に吹く風は頬を撫(な)で
星空を仰ぐ崖の上で
不安げに震える
若人の瞳に
小さい星を灯すだろう

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