いちばんの孤独/佐伯黒子
 
キャンドルに灯をともして、意味のあることやないことを語り合うような夜が欲しかった。

オレンジ色の光のそばで浮かぶ顔を、その顔を、目に焼き付けるまで見つめていたかった。

彼にはいつもそんな時間はなかった。常に仕事に追われ、一息つく間もなく次、一息つく間もなく次、ずっとそういう印象だった。余裕のない姿をよく覚えている。辛い夜にやってきて、ただ一緒に横になるだけの日が続いたことも。その多忙さはまともな状態ではないのかもしれないが、私たちにとってそれは疑いもなく日常だった。

毎日、毎日、すぐやってくる。数時間前に思ったことがあっても、その数時間後はすぐやってくる。明日はすぐにやってくる。
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