9月の朝に/Lucy
 
望む
嘘つきと言われても

誰かの真っ赤な血で汚れた
サンダルを履いて立ち去るのが
どうか 僕ではありませんように

無口な海が
油のようにぎらぎらと
夕陽を溶かして凪いでいる

誰も傷つけたくないなんて
本当は思ったことなどない
誰よりも
傷ついてきた僕だから
誰よりも優しい僕だから

僕は空っぽのマントを脱いで
今日からは僕らしく
いや僕らしくなく
すべての言葉に耳を澄まして
僕のいかさまを
1から洗い直さなくちゃいけない
決して
誰とも共感せず

決して、誰にも敵対せずに

もしも
最後に残されたのが
勇気なら






(2010年 「蒼原88号」掲載の過去作品)
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