夜空と楽譜と/りゅうのあくび
やや乾いた
風がない
夜空のなかで
Schubertの楽譜から
不思議な音が響く
一瞬のあいだに
戦争写真家が撮影した
たった一枚の写真が伝える
真実みたいに
部屋中に澄みわたる
透明な音
群衆の真ん中で
時刻を確かめている
いつかの少女はもう永遠にいない
独り楽譜を見つめる
まなざしだけが
何か漆黒の光が込もっているみたいに
ある世界の終わりを告げる
音だったのかもしれない
不協和音のように
或る真実を伝えなければ
ならなかったのは
純白の雲が
浮かぶ夏が終わる
足跡だったのだろうか
黄昏に少年が颯爽と
走り出した足音のような
残響があって
もう秋が訪れる
夜空は奏でられ始める
傍らにいる
彼女が弾く
ピアノの
旋律を聴いて
一篇の詩を
書き始め
ただ夜空を想う
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