空気と風の間/opus
 
会えなかったが
それでも、
君の「その気持ち」だけで
僕はこれまで何とかやってこれた

例えば、
君がニュースで僕のことを知った時、
決して後悔などしないで欲しい
でも、
君はまた泣くんだろうな

目が霞んできて
鼻もきかなくなってきた
頬にまとわりつく
血とアスファルトの感触だけが
僕の今の精一杯

「ぬるい」

二人で一頻り泣いた後、
僕らの目は真っ赤になり
ぱんぱんに腫れ上がった
僕らは目を合わせて
ぐすぐすと鼻を鳴らしていた
君の目は僕を写し
僕の目は君を写した
(恐らく)

「行こうか」

君はコクリと頷いた
僕も頷き
お互いの家路についた
途中でふりかえると
君はトボトボと
歩いていた
ただ、
その歩は
着実に前に進んでいた

「ありがとう」

そこで世界は
光に包まれ
泡となって消えた

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