体温/あおい満月
胸に手をあてる。
指がゆっくりと心臓に近づく。
きいたことのない、
初老の声が響く
(自身の内へ
精神の内へ入りなさい
そこに、
求めているものが
必ずあります。)
海を映す空の鏡になって
ノートの上に涙を落とす。
涙は骨になって
息を求める。
そこに血肉を与える
動物はとても小さいけれど
見えない目のかわりに牙がある。
動物は右手に上ってきて
手のひらを噛む。 血があふれる。
血は、涙の彩になり
ことばに風をふきかける
窓が割れて、
動物に翼が生えて
外へ飛び出していく
空を舞った灰の羽根が
髪の毛に絡みついて
はじめて、
孤独の体温を知る。
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