ぶっつけ未詩 8 (煮たヨルナ)/Giton
 
なまれながら‥

何年かして学年が上がり漢字を習ったあと、ぼくは久しぶりにあの塀をじっくりと見る機会があったが、すでに工場は移転し、塀の向こう側は、今では空き地になっていた。

  警笛にたよるな

表面は古くなって、ほとんど砂のように黒くなった塀には、かすれて消えそうな黄色い字が書かれてあった。

大人たちは、ようやくヨルナを煮るのをやめたのだ、とぼくは知り、ほっとしたが、

こんどは、どんな恐ろしいことが始まるのだろうかと身構えた‥
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