朝の雨は/Giton
 
あまあしは まっすぐにおちる
あまあしは ななめにおちる
あまあしは 屋根におちる 路におちる 黒い蝙蝠におちる
きみにおちる ぼくにおちる きみの髪の毛をぬらし 脚をぬらし ぼくのかたとうでとをぬらす
まっすぐのあまあしがビルのうえにおちる やまにおちる 川面(かわも)におちて 水はざわめく

ななめのあまあしはずっとななめにふりつづき
清楚な直線をひきつづけ すべては静止し 決してなにごとも起きないかのよう
あめがふっていた旧い旧い世界 あめがふるだけでなにも起きなかった始原(はじめ)の世界
雨だけがふりつづく懐かしい世界 何も起きない 何も生じない 神は眠りから覚めることがない

誰も目覚めることがない雨の底 生きるとか死ぬとか
どちらでもいいね
そろそろ朝餉のしたくをしようか
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