白桃/あおい満月
 
朝露にぬれた白桃を
吸血鬼が狙っている
吸血鬼は黒く、
爪の先ほどの大きさしかなく
細長い観葉植物のなかで暮らしている
白桃には、
ちいさな熱があって
風をあおいだり、
髪をすいたりしている
微かにゆれる黄金色の草原は
陽を浴びながら
目を閉じたり開いたりしている

なにかの気配がする
ささやきでしかない
あうんの呼吸が
硝子越しの果物なかの
自分には寂しい
吸血鬼を指で潰す。
雌の腹
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