未明、みえないまま/渡邉建志
 
なくて、ただただ無時間に光っている。「パッセ」が何かというのは、詩人のきっと、独特の固有名詞への愛着、おもちゃ箱のように、その愛着がかつて、異質なもののように驚いたり私をさせて(それは悪い意味ではなくて)、ただ、共鳴というのとは違う形で詩を見させていたように思うのだけれど、ここにおける「パッセ」は何の異質感もなく、パッセでしかない、そうだよな、と思う。いったいそのパッセが何者であっても。この中にある人かもしれない。でも、それが明示されていなくてうれしい。この詩の中にあるパッセ的なパッセを見つけて、その日のパッセにすればいいし、明日違ってもいい。
ずっと、息をきるように、話しかけてくれている、その息の白さだとか、その必死さだとか、その向こうには明らかに、「光のつぶて」があって。美しさに、打ち抜かれて。そして、ほんとうに。「振り返って/雪解けだねって」言われたいと思う。ほんとうに。心から。




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