ぼくらが旅にでない理由/あ。
コップ一杯の麦茶に昨日見た夢を溶かして
ぐいとひといきに飲み干す
季節は夏、あくまで夏だった
例えるなら、ここは砂漠
らくだの背中にまたがってゆらり、と
色あせたリュックに刺さる白旗
ぼくらはいつだって負けている
嗚呼、月がとてもきれいだ
ぬるい空気にまぶたが持ち上がる
寝汗を吸い込んだシャツを洗濯機に放り投げ
気だるげなコップに麦茶を注ぐ
ふ、と外に目をやれば洗いざらしのタオルが
白旗みたいに揺れていた
だからぼくらは
旅にでない、きっと
戻る 編 削 Point(5)