『鋏』/あおい満月
 
『鋏』


月が、
夜に噛まれる。
欠けていく姿は
溶けて海となった
残り少ない流氷
その上に、
この足は立つ
諸手は木の柱に括られて
身動きができない。
足掻いた手首が擦りむけて
血が滲む
空はみるみるうちに
暮れていき
月があらわれる
少し離れた
ひだりがわの大地には、
満ち欠けした月が
星の雨を呼んでいる



時計の針は、
刻々と一日を飲み込んでいく

(早く帰らないと)

この頭の一日が
終わってしまう
窓を見ると
目を霞めた月が
あくびをしながら
この手元をみてい
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