釦の追憶/瑞海
 
最近よく夢を見るんです
出兵直前のあなた
居間に堅く座って
じっと私を見つめておりました
いつもらしくないと思っていたら
軍服の釦が掛け違っていたので
やはりあなたはあなただ
と思いました

最後釦を掛け直す時
あなたに触れれてよかった
少し肩を震わせるあなた
私は幸せ者であったと
今でも思います

戦友からの土産
相変わらず他人に優しいあなた

しっかり家族は守りました
おかげでひ孫も持てました
あなたに似て
男の子は少しつり目で
女の子は色白で

身体に気を目一杯配りました
おかげで今は95歳
ぼけずに元気にしておりますが
もうすぐかもしれ
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