地上の彗星/瑞海
 
とぼとぼ帰路の中
目の前の大きな道路

お空の星はもう見えなくなってしまった

時速45kmの彗星が放つガスが
15mの横断歩道の先の少女に纏わりつく

その反対の僕にだって
真っ白いカッターシャツが灰色に染まる

でも少女はむせてなんかいなくて
義務化されたガスマスク越しに
満面の笑みを浮かべて

僕は手を伸ばすけど
少女は走って

"君はこんな世界に居ちゃあ駄目だからね!!!
君は肺でしっかり息をしてね!!絶対よ!!!
君は…君は…"

手と手が繋がる寸前
消えた少女
欠片になって

彗星の鳴く音で
聞こえなかった大事なこと
それでもしっかり届いたから
心配しないで欲しい

少女が見たかったものを
見せれるように
空を仰げるように
僕は大人になるから

心配しないで 眠っていてね



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