それ/浩一
 
ひとは誰でもその胸のおくの さらに
横のほうの暗がりに
誰にも触らせてはならないものを
もっている
誰も触ってはならないものを
かくしている

それをいのちとよぼうが
それをこころとよぼうが
ジンケンとよぼうが
どうでもよいことだけど

しんにそれを実感しそれを畏れないならば
なにをいおうが
どんな運動をしようが

たとえば「いのち」というコトバは
その記号としてのせいしつを露にし
記号は単なる記号としての記号の死を死ぬ

ひとは誰でもその胸のおくの さらに
横のほうの暗がりに
誰にも触らせてはならないもを
もっている

そこに土足で踏み込むものは必ず罰せられるだろう
じぶん自身のそれによって
戻る   Point(4)