陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
にかなうはずもなく、何度も投げつけられ殴られ続けて、立つことも口をきくこともできなくなって倒れ込んだ時、宗一郎がようやく口を開き
「健さんを見習え、バカタレが!」
そう怒鳴った。意識朦朧となっていた太郎は、何のことかとんと理解できないまま「今のところ、オヤジに逆らわないことが賢明だな」と白旗を高々と掲げたのだった。
「太郎、大学どこ受けんの?」
「東大入試中止になったしなぁ、陽子はどこよ?」
「M大の教育学部」
「教育学部? センセにでもなるんか?」
「そ、小学校の先生になるんだ」
「ふ〜ん、それじゃ俺もとりあえずM大にするかな」
「何よ、それ。主体性ないなぁ」
「主体
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