陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
上げたこの手紙を、いつも使っている猫のイラストの入ったお気に入りの封筒に入れ、宛名を書き、切手を貼って、家から歩いて五分位の所にある郵便ポストに放り込んだ。
 佐藤陽子からの返事を受け取った太郎は、ショックのあまりしばらく寝込んでしまい・・・というのはまっ赤な嘘で、生来のしぶとさを全開させて、文通拒否宣言をした陽子宛ての手紙を書き続けた。不思議なことに、必ず、彼女から返事が来た。彼女の手紙を何度も読み返してはニヤついている太郎に、母親の文枝は
「太郎、お前もうすぐ受験なんだから、手紙読んでニヤついてる暇あったら勉強しな!」
眉をひそめて、いつもそう小言を言った。
 二人が高校三年になっ
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