亀の教え/まーつん
 
 海の大さを知るためには
 一滴の水を
 見詰め直さなければならない
 と、老いた亀は言った
 波打ち際で遊ぶ
 他人の子供を
 呆然と眺める
 僕の足元で
 亀はそう言った
 その日
 波頭は美しく泡立ち
 溶けかけた夕陽は
 潮騒の向こうに
 ぬるく燃えていた
 水のお喋りに
 耳を傾けていた僕は
 草原の騒めきを思い出した
 どちらも、
 よく似ているな、と
 すると、いつの間に
 そこにいたのか
 亀が一匹、首を伸ばして
 こちらを見上げていたのだった
 砂漠の空虚な豊かさを
 知りたければ、一粒の砂を
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