夏の歌/
Lucy
蝉は喚いているのだろうか
虫に生まれたわが身を嘆き
いや むしろ
祈り続けているのだろうか
来世の至福を待ち望み
朝、昼、夜と、勤行を欠かさず
一心不乱に経文を唱えた
信心深い祖母のように
それとも呪っているのだろうか
短い命が有るうちに
世界が溶けてなくなれと
森も林も夏の業火に焼き尽くせと
16歳の私のように
けれどあるいは
蝉は歌っているのだろうか
己の命が儚いなどと
つゆ知らず
生まれたことへの歓喜の歌を
力の限り
戻る
編
削
Point
(17)