『嘘』/あおい満月
 
携帯電話のディスプレイは
血の指紋であふれている
無数の未完成のことばの指紋
指でなぞれば
嘘に近づく

皮を剥けば剥くほど
なくなっていく野菜になって
うすい記憶の皮膜になって消えていく
この傷つけた腕の血は
その目にはどううつるのか
蜘蛛の巣を覗き込んでいる
睫毛にといかける

毛孔から
血が滲み出す
血は脚をつたって
車内の床へと流れていく
誰の目にも見えて
誰の目にもみえない
携帯電話が
手から滑りおちる

(落としましたよ)

呼ばれた声に
背中を掴まれて
血がひいていく

ま・き・も・ど・さ・れ・る

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