秘密の恋/浩一
表通りの公道を
なにかに反対しているらしい
葬列のような賑わいの
長いデモ隊の列が通り過ぎたあと
裏通りの廃屋の
無人のビルディングの暗がりで
なにも反対していない少年と少女の
秘密の恋が成就する
ひっそりと
ふるえる氷の胸と胸をあわせ
暗がりのなかで
たがいの燃える頬に触れる
そして
わななく真っ赤な唇で
何度も何度も
痛々しいくちづけをする
やがて少年はめくらになるだろう
やがて少女はつんぼになるだろう
とおくで デモ隊の
力ないシュプレヒコールが
力ない抗議声明が
かすかに聞こえていた
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