クラブマリノス/草野大悟2
み作るね」
相良君は、僕の腕をすり抜けキッチンに向かった。
対面型キッチンで料理する相良君を見ていると、何だか夫婦になったような気がしてきた。
「取りあえず、これで先にやってて」
蛍烏賊の醤油付けとホッキ貝のサラダがテーブルにのせられた。
キンキンに冷えた江戸切り子の徳利と猪口で日本酒を飲んだ。口に含んだ途端、米の馥郁とした香りが口いっぱいに広がった。さらりとした外連味のない酒だった。
「相良君、これほんとおいしいね」
「そお、よかった。今年の新酒で、今年はこれまでになく出来がいいんだって」
「へえー」
その日相良君が作ってくれたのは、鯨のハリハリ鍋だった。クーラーの
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